介護とは高齢者のサポートをするだけではなく、もっと大きな意義と役割があります。その中の重要な項目として「高齢者の尊厳を守る」ことがあります。当サイトは尊厳を大切にする介護について紹介しています。
介護保険制度が始まる以前は、介護サービスは行政による措置であったので、利用者さんがサービスを選ぶことができませんでした。利用料も行政から直接事業者に支払われていたことから、利用者さんはお客様ではなかったのです。
しかし、介護保険制度が始まった以降は、利用者さんが事業者を選ぶことができるようになり、保険給付も利用者さんが受けている関係へと変わり、お客様と考える方が自然な関係性に変化しました。この利用者さんをお客様と考えることは、介護において正しいのかを考えてみましょう。
ホテルやレストランの「お客様」が急に店員に暴力をはたらくようなことが起これば、当然警察を呼んで対処するはずです。つまり、お客様としてふさわしくなければ、その時点でお客様ではなくなることが一般的です。一方で介護サービスの「利用者さん」が認知症の症状によって介護職員に暴力をはたらいても、警察を呼んで逮捕してもらうという対応はしないはずです。この対応の違いは、そもそもお客様として捉えていないからです。
お客様は本来のサービスを超えて要求をしてきた時点で、サービスを提供している側はお客様ではないとして対応することができます。しかし、介護サービスを提供している側は、それが適切な対応かどうか慎重に考えなければなりません。「認知症だからといって暴力は許されないので退所してもらいます」という安易な考え方ではいけないはずです。だからこそ、介護では利用者さんはお客様ではなく、あくまでも利用者さんとして接する必要があるはずです。もちろん暴力を受け入れるという話ではなく、介護サービスの利用者さんとの関係はお客様ではないと認識する必要があります。
介護職は社会の中で、現在では特に必要とされている要介護者の支援という役割を担っています。だからこそ、なんでも利用者さんの言う通りに動いて、身体を動かす機会を奪って身体機能を失わせるような介護をしてはいけません。利用者さんをお客様と考えてしまうことは、介護においてはかえって相手のためにならず、むしろ害になってしまっている可能性が高いです。利用者さんとの関係性は対等という考え方が適切です。
介護サービスを提供する側と利用者さんとの関係は対等ですが、だからと言って言葉遣いや態度まで対等にはできません。社会人として目上の人に対する礼儀をわきまえ、尊厳を守るための配慮を欠いてはいけません。
高齢者の尊厳を守るためには組織的に動いていく必要があるので、職場全体が努力していなければ達成は難しいです。理念を共有できている職場で働き、尊厳を守る介護を行うためにぜひ知っておいて欲しいことがあります。